経営・管理ビザから永住権を取得する条件・注意点などを行政書士が解説

経営・管理ビザから永住権を取得する条件・注意点などを行政書士が解説

外国人経営者の方が長期的に日本でビジネスと生活を続ける上で、「永住権の取得」は大きな目標の一つです。この記事では、在留資格「経営・管理ビザ」から永住権を取得するための条件、必要書類、注意点について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。

経営・管理ビザと永住ビザの違いとは?

経営・管理ビザとは?

外国人が日本で会社経営や管理業務に従事するための在留資格。事業の経営又は管理に実質的に従事することや事業の継続性・安定性が求められる。

取得要件として、事業所の設置(会社設立)、2名以上の常勤職員又は500万円以上の資本金、3年以上の経験が必要とされています。

在留期間は1年、3年、5年などとしており定期的な更新が必要です。

更新には決算書類などが必要となり経営状況を審査されます。

永住ビザ(在留資格「永住者」とは?

永住ビザは、日本での就労に制限がなく、起業や転職、従事する職務内容も自由です。また、在留期間の制限もない為、更新手続きをする必要がありません。

経営・管理ビザと永住ビザの違い

経営・管理ビザは、日本で会社を経営・管理するための就労ビザです。

比較的少ない初期投資で申請ができ、自由なビジネス展開が可能なビザですが、一方で、債務超過や赤字が連続した場合、更新に影響を及ぼします。

永住ビザの場合、活動内容に制限がない為、適法であればどんな仕事も自由にできます。起業はもちろん、自分の会社を辞めて他の会社で働いたり、転職したり、アルバイトをしたり、何もしないことも可能です。また、在留期限がない為、更新のたびに事業実績に左右されるといったことがなく、安心してビザを維持することができます。

経営・管理
  • 職種の制限:あり(ビジネス内容は適法であれば制限はない)
  • 在留期間:あり(3月又は4月、6月、1年、3年、5年)
  • 期間の更新:あり 一定期間ごとに必要
永住者
  • 職種の制限:なし
  • 在留期間:なし
  • 期間の更新:なし(在留カードの更新のみ)
メリットについて詳しくはこちらをご覧ください
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経営・管理ビザから永住権を取得するための基本要件

永住権を取得するには、以下の3つの基本的な要件をすべて満たす必要があります。これは、経営・管理ビザをお持ちの方にも共通する基準です。審査は総合的に行われるため、1つの条件を満たしていないだけでも不許可となる可能性があります。しっかり確認しましょう。

素行が善良であること(犯罪歴・交通違反などが問題ないこと)

「素行が善良」とは、日本で法律やルールを守り、誠実に生活しているかどうかを指します。これには以下のような具体的なポイントが含まれます。

ポイント
  • 拘禁刑、罰金などの刑を受けていないこと
  • 微罪で警察に繰り返し逮捕されていないこと
  • 重大な交通違反をしておらず、軽微な違反を繰り返していないこと
  • 家族を含め資格外活動許可といった入管法のルールに違反していないこと

独立した生計を営むに足りる資産または技能を有すること

日本での生活を安定して営んでいるかどうかが審査されます。具体的には、次のような基準が見られます。

ポイント
  • 債務超過や赤字が連続していないこと
  • 過去5年間の年収が300万円以上であること
  • 扶養家族1人につき50万円~70万円を年収に加算した金額が必要であること
  • 事業を2年黒字経営にしてから申請することが望ましいこと

その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(在留年数を満たし、納税などの義務を果たしていること)

原則として、永住申請には10年以上継続して日本に在留していることが必要です。

その他ポイント
  • 期間中、一回の出国が90日以上だった場合や又は1年間のうち合計でおおよそ100日以上の出国がある場合には「引き続き日本に在留していること」と評価されない可能性があること
  • 会社としての税金、個人としての税金を期限を守って支払っていること
  • 税金、年金、健康保険については未納はもちろん、支払い期限を過ぎた納付も不許可理由であること
  • 未納や支払い期限を過ぎた納付があった場合、あらためて一定期間支払い実績を積むこと
  • 在留カードの記載事項に係る届出等の入管法上の届け出義務を果たしていること
  • 保有している在留資格の在留期間が3年または5年であること
  • 感染症または薬物中毒者でないこと

3つの要件について詳しくはこちらをご覧ください
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参考 出入国在留管理庁ホームページ 永住許可申請セルフチェックシート

 ※ 1つでも「いいえ(No)」に該当した場合、永住許可申請は「不許可」となる可能性が高くなります。また、「いいえ(No)」が1つもなかったとしても、永住許可申請の「許可」を約束するものではありません。

永住申請の必要書類一覧

個々の状況により書類が異なりますが経営・管理ビザの場合、一般的な書類に加え、事業実績を証明する書類が必要になります。

  • 永住許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 理由書
  • 家族全員の住民票
  • 身分関係を証明する資料(戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書、認知届の記載事項証明書等)
  • 申請人又は申請人を扶養する方の職業を証明する資料(登記事項証明書、定款の写し、営業許可証の写し、決算書、法人税の確定申告書の写し、会社案内やホームページの写しなど)
  • 申請人及び申請人を扶養する方の所得及び納税状況を証明する資料(住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書など)
  • 申請人及び申請人を扶養する方の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料(ねんきん定期便、健康保険被保険者証(写し)など)
  • 申請人又は申請人を扶養する方の資産を証明する資料(預貯金通帳の写しなど)
  • パスポート(旅券)又は在留資格証明書の提示
  • 在留カードの提示
  • 身元保証に関する資料
  • 了解書

※個人の状況により異なります。専門家による確認をおすすめします。

必要書類について詳しくはこちらをご覧ください
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参考 出入国在留管理庁ホームページ 提出書類チェックシート

経営・管理ビザから永住権を取得する際の注意点

経営・管理ビザから永住権を目指す場合、特に次のポイントに注意してください。

事業の継続性と安定性

ポイント
  • 決算状況の確認。債務超過や赤字でないこと
  • 一時的な売上でなく安定した事業基盤があり、継続的な売上や利益があるか

納税状況・社会保険の加入状況

ポイント
  • 法人としての納税(法人税、消費税など)に未納がないこと、支払い期限を守っていること
  • 個人としての納税(所得税・住民税)に未納がないこと、支払い期限を守っていること
  • 義務となっている各種社会保険に適切に加入していること

交通違反・犯罪歴

ポイント
  • 犯罪行為や交通違反、入管法上の違反などは審査に大きく影響する
  • 家族の資格外活動許可で定められた時間以上の勤務などについても同様

行政書士に依頼するメリット

永住申請は、提出書類が多く、審査も厳しいため、少しのミスで不許可になることもあります。特に「過去に申請して不許可だった」「自分のケースが基準ギリギリかもしれない」と不安な方には、専門家のサポートを強くお勧めします。

  • 書類の不備やミスを防げる
  • 複雑な要件の確認・整理ができる
  • 不許可リスクを事前に診断できる
  • 入管とのやり取りを代行してくれる
  • 忙しい方や日本語に不安がある方でも安心
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まとめ

「経営から永住権を取得する」ためには、審査官が安心できるような事業の実態・説明・資料をしっかり整えることが重要です。自分で調べても不安がある方や、過去に不許可になった方は、ぜひ専門家にご相談ください。

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