就労ビザから永住権を取得するには|必要条件・注意点を行政書士が解説

就労ビザから永住権を取得するには|必要条件・注意点を行政書士が解説

はじめに

永住権を取得すれば、ビザ更新の手間がなくなり、就労や居住に制限がなくなるため、生活の安定にも大きくつながります。そのため、日本で中長期にわたり働いている多く外国人の方が、「将来的には永住権を取得したい」と考えるようになります。

この記事では、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)から永住権を取得するための条件や手続きの流れ、よくある落とし穴などを、行政書士の視点から詳しく解説します。

永住権とは?就労ビザとの違い

永住権(永住者ビザ)とは、日本に無期限で居住・就労できる在留資格です。一方、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)は、働ける職種が限定され、更新も必要です。

就労ビザ
  • 在留期間:通常1年から5年
  • 職業制限:あり ※申請時の職種(就労ビザの種類)によって限定
  • 更新:必要(期間満了ごと)
永住ビザ
  • 在留期間:無期限
  • 職業制限:なし
  • 更新:不要 ※在留カードの更新は7年に1回あり
メリットについて詳しくはこちらをご覧ください
日本の永住権のメリットとデメリット:申請前に知っておくべきポイント
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日本の永住権のメリットとデメリット:申請前に知っておくべきポイント

永住権取得の主な要件

永住権取得には以下の3つの要件が原則です。

素行が善良であること(犯罪歴・交通違反などが問題ないこと)

ポイント
  • 懲役や禁錮、罰金などの刑を受けていないこと
  • 微罪で警察に繰り返し逮捕されていないこと
  • 重大な交通違反をしておらず、軽微な違反を繰り返していないこと
  • 家族を含め、資格外活動許可といった入管法のルールに違反していないこと

独立した生計を営むに足りる資産または技能を有すること(基準以上の安定した収入があること)

ポイント
  • 過去5年間の年収が300万円以上であること
  • 扶養家族1人につき50万円~70万円を年収に加算した金額が必要であること
  • 申請者が専業主婦(夫)で働いていない、または収入が少ない場合は世帯年収(配偶者年収が)300万円以上あること
  • 年収が増える転職以外は勤続期間1年以上経過してから申請することが望ましいこと

その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(在留年数を満たし、納税などの義務を果たしていること)

ポイント
  • 引き続き日本に10年以上在留し、そのうち直近の5年間は就労資格か居住資格であること
  • 期間中、一回の出国が90日以上だった場合や又は1年間のうち合計でおおよそ100日以上の出国がある場合には「引き続き日本に在留していること」と評価されない可能性があること
  • 税金、年金、健康保険については未納はもちろん、支払い期限を過ぎた納付も不許可理由であること
  • 未納や支払い期限を過ぎた納付があった場合、あらためて一定期間支払い実績を積むこと
  • 在留カードの記載事項に係る届出等の入管法上の届け出義務を果たしていること
  • 保有している在留資格の在留期間が3年または5年であること
  • 感染症または薬物中毒者でないこと

3つの要件について詳しくはこちらをご覧ください
日本で永住権を取得するための3つの重要要件:素行、独立、国益
出入国在留管理庁のホームページにある「永住許可に関するガイドライン」では法律上の要件として以下の3つを挙げています。 素行が善良であること 独立の生計を営むに足…
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日本で永住権を取得するための3つの重要要件:素行、独立、国益

参考 出入国在留管理庁ホームページ 永住許可申請セルフチェックシート

就労ビザから永住を目指す場合の注意点【審査で見られる6つの重要ポイント】

① 在留資格の更新履歴に問題がないか

犯罪や交通違反以外にも過去の在留資格の更新において、更新を忘れた、在留期限を超過してしまったなどの履歴があると、永住審査においてマイナスになります。

ポイント
  • 在留カードの有効期限を常に把握し、早めに更新手続をする習慣を持つこと。
  • 過去に出入国歴のトラブルがある場合は、専門家に事前相談するのがおすすめです。

➁年収が安定し、家族を扶養できるレベルにあるか

永住申請では、安定した生計能力が強く求められます。特に、扶養家族(配偶者・子)がいる場合は、世帯全体を支えるに足る年収かどうかが審査されます。

年収目安
  • 単身者:年収300万円以上
  • 配偶者・子どもがいる場合:1人あたり+50~70万円
ポイント
  • 直近1年だけでなく、過去5年の安定性も重要。
  • 転職をしている場合、勤務期間が短いと安定性に疑問が持たれます。新しい会社で1年以上勤務実績を作ってから申請しましょう。

➂ 扶養家族が「家族滞在」の在留資格である場合

扶養家族(配偶者・子ども)が「家族滞在」の在留資格で滞在している場合、以下のような点が審査で見られます。

ポイント
  • 扶養者(申請者)の収入が、家族全体の生活費をまかなえる水準にあるか。
  • 扶養家族に違法就労の履歴がないか。
  • 「家族滞在」ビザの家族は、原則として単独で永住申請ができません。申請者が一人で申請する場合、家族は配偶者ビザや定住者ビザへの変更が必要になります。家族一緒に申請する場合、緩和された申請要件が適用されます。

➃ 出入国の回数・理由が適切か

日本在住中に何度も出国している場合、その頻度や期間によっては「本当に日本に定住しているのか?」と疑問を持たれる可能性があります。

ポイント

  • 1回の出国が3か月(90日)以上だった場合や1年間の内おおよそ100日以上の出国がある場合には、永住申請に影響を与える可能性があります。
  • 仕事や緊急時による出国であれば、理由を説明できる書類や証明があると有利です。

⑤ 納税義務・社会保険の加入状況

税金や社会保険の滞納は、永住審査において大きなマイナスポイントになります。

審査対象になる書類
  • 住民税の納税証明書(過去5年分)
  • ねんきん定期便や国民年金保険領収書等
  • 健康保険証や国民健康保険料領収書等
ポイント
  • 滞納は当然不許可となりますが、期限を守っていない場合も同様です。
  • 未納や滞納、期限を守っていない支払いの場合は、正しい支払い実績を積み上げてからの申請となります。

⑥現在の在留資格の期間が「最長」であるか

永住申請時には、現在の在留資格の在留期間が最長であることが求められます。(一般的には5年だが、当面、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱うとされています。)

ポイント
  • まずは就労ビザの更新申請の際、3年または5年の在留期間を取得する。
  • その後、永住申請を行うのが一般的な流れです。

就労ビザから永住許可を取得するための流れと必要書類

申請の流れ
  1. 要件の確認
  2. 必要書類の収集・作成
  3. 入国管理局への申請
  4. 審査
  5. 結果の通知
申請の流れについて詳しくはこちらをご覧ください
日本での永住許可申請ガイド|手続きの流れと成功のポイントを徹底解説
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日本での永住許可申請ガイド|手続きの流れと成功のポイントを徹底解説

主な必要書類
  • 永住許可申請書
  • 理由書
  • 戸籍謄本や出生証明書等
  • 住民票
  • 在職証明書等
  • 課税、非課税証明書
  • 納税証明書
  • 年金関係書類
  • 健康保険関係書類
  • パスポート
  • 在留カード
  • 身元保証書
  • 了解書 など

※個人の状況により異なります。専門家による確認をおすすめします。

必要書類について詳しくはこちらをご覧ください
永住許可申請に必要な書類一覧と取得方法|完全ガイド
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永住許可申請に必要な書類一覧と取得方法|完全ガイド

よくある不許可理由とその対策

不許可理由と対策
  • 納税等の遅延:納税履歴を確認し、必要であれば実績を積み重ねてから申請する
  • 過去の交通違反・犯罪歴:大きな違反などがあれば期間をあけてから申請する
  • 年収が不安定:過去5年間の安定収入があるかを確認。扶養とのバランスも検討
  • 出入国の頻度が多い:正当な理由が説明できるように準備する
  • 提出書類の不備:書類の最新情報を把握し、プロのチェックを受ける

行政書士に依頼するメリット

永住申請は、提出書類が多く、審査も厳しいため、少しのミスで不許可になることもあります。

  • 書類の不備やミスを防げる
  • 複雑な要件の確認・整理ができる
  • 不許可リスクを事前に診断できる
  • 入管とのやり取りを代行してくれる
  • 忙しい方や日本語に不安がある方でも安心
永住権を自分で申請するのはリスクがある?行政書士が解説
はじめに:永住申請、こんなふうに考えていませんか? 「書類を集めれば許可されるはず」 「ネットで見た通りに準備すれば大丈夫」 「不許可になっても、また出せばいい…
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永住権を自分で申請するのはリスクがある?行政書士が解説

まとめ

「就労ビザから永住権を取得する」ためには、正確な情報と適切な準備が不可欠です。自分で調べても不安がある方や、過去に不許可になった方は、ぜひ専門家にご相談ください。

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