永住権(永住ビザ)は、日本に長期的に滞在し、安定した生活基盤を持つ外国人に与えられる資格です。この許可を得ることで、日本国内での滞在期間に制限がなくなり、ビザの更新手続きが不要となります。ただし、日本の永住権を取得するためには、一定の要件を満たし、申請手続きを正確に行う必要があります。以下に、永住権の要件、必要書類等手続きの流れについて記載します。
永住権の申請手続きの流れ
永住権を取得するにはまずはご自身が要件を満たしているか確認する必要があります。要件は保有している在留資格や個人の状況によって異なりますが、要件を満たしていた場合、必要書類を確認して各役所等から取り寄せ、作成して行きます。
もし自身が要件を満たしているかわからない場合や自分で判断するのが不安な場合には管轄の出入国在留管理官署で相談をして確認してもらいます。問題無いようであれば申請に必要な書類も一緒に確認しておきましょう。
なお、当事務所でも要件の判断を無料で実施しています。お問合せフォームから必要事項をご入力いただければ後日可否のご連絡いたしますので、ぜひご利用ください。
準備した書類を完成させ、すべて揃えられたら住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に永住許可申請をします。
手続きの流れとしては要件の確認➡必要書類の確認➡書類の収集・作成➡申請書類提出になります。
永住権の要件
出入国在留管理庁のホームページにある「永住許可に関するガイドライン」では法律上の要件として以下の3つを挙げています。
それぞれについて説明していきます。
素行が善良であること(素行善良要件)
一つ目は素行善良要件です。
これは申請者のこれまでの素行が善良であることを求める要件です。
永住許可に関するガイドラインでは「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」とされています。
すごく簡単に言えば「悪いことをしていない方」、これが素行善良要件です。
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
二つ目は独立生計要件です。
永住許可に関するガイドラインでは「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」とされています。
一言で言えば「食えてるか、食っていけるか」、これが独立生計要件です。
その者の永住が日本国の利益になると認められること(国益要件)
三つ目は国益要件です。
言葉そのままで、申請者の永住が日本の利益になると認められることが求められます。
永住許可に関するガイドラインでは「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」と記載され次の4つを挙げています。
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
必要書類
永住許可を申請する際には多くの書類を提出する必要があり、書類は在留資格や個人の状況により異なります。以下は日本人の配偶者の方が必要となる書類例となります。
永住許可申請書
永住許可申請書を記入します。申請書は、入国管理局のウェブサイトからダウンロードできます。
写真
申請者の顔写真(縦4cm×横3cm)を提出します。写真は過去3か月以内に撮影されたものでなければなりません。
身分関係を証明する資料
日本人配偶者の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要です。申請人を含む家族全員(世帯)の住民票: 個人番号(マイナンバー)については省略し、他の事項については省略のないものとします。
申請人又は申請人を扶養する方の職業を証明する資料
会社等に勤務している場合は在職証明書、自営業等である場合は確定申告書控えの写し・営業許可書の写し(ある場合)、その他の場合には職業に係る説明書及びその立証資料が必要となります。
住民税の課税(非課税)証明書
直近3年分が必要です。
住民税の納税証明書
直近3年分が必要です。
住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料
通帳の写し、または住民税の領収書のコピーが直近3年分必要です。会社員で給与から天引きされている場合には不要となります。
納税証明書その3
源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税について取得します。
ねんきん定期便又はネットの「各月の年金記録」の印刷画面
国民年金以外の年金(厚生年金など)に加入している方は提出してください。直近2年分が必要です。
国民年金保険料領収証書(写し)
直近2年間において国民年金に加入していた期間がある方は、当該期間分の領収証書(写し)を全て提出してください。直近2年間の全ての期間において国民年金に加入していた方で、直近2年間(24月分)の国民年金保険料領収証書(写し)を提出できる場合は、ねんきん定期便又はネットの「各月の年金記録」の印刷画面を提出する必要はありません。
健康保険被保険者証(写し)
会社員等で健康保険に加入している方は提出してください。
国民健康保険被保険者証(写し)
自営業等で国民健康保険に加入している方は提出してください。
国民健康保険料(税)納付証明書
直近2年間において国民健康保険に加入していた期間がある方は必要となります。
国民健康保険料(税)領収証書(写し)
直近2年間において国民健康保険に加入していた期間がある方は当該期間分の領収証書(写し)を全て提出する必要があります。
健康保険・厚生年金保険料領収証書(写し)
申請時に社会保険適用事業所の事業主である方は直近2年間のうち事業主である期間における全ての期間の領収証書(写し)が必要となります。全ての期間について領収証書(写し)が提出できない方は次の社会保険料納入証明書又は社会保険料納入確認(申請)書が必要となります。
社会保険料納入証明書又は社会保険料納入確認(申請)書
健康保険組合管掌の適用事業所であって、健康保険・厚生年金保険料領収証書(写し)の提供が困難である場合は、日本年金機構が発行する社会保険料納入証明書又は社会保険料納入確認(申請)書に加え、管轄の健康保険組合が発行する健康保険組合管掌健康保険料の納付状況を証明する書類が必要となります。
身元保証書
身元保証人には一般的に、配偶者の方や雇用主の方がなっています。
身元保証人に係る資料
身元保証人の身分事項を明らかにする書類が必要です。(運転免許証の写しや在留カードの写し、マイナンバーカードの写しなど)
了解書
退職や転職、結婚や離婚といった理由により申請後、自身の状況が変化した場合に出入国在留管理局に連絡することを約束する書類です。
パスポート等の提示
パスポートまたは在留資格証明書、在留カードの提示が必要となります。
その他
この他にも、自宅を借りている場合には賃貸借契約書のコピー、不動産を所有している場合には登記事項証明書、自宅の写真(外観、玄関、キッチン、リビング、寝室)、スナップ写真(家族や職場の人、身元保証人と写っているもの)、最終学歴の卒業証明書または卒業証書コピーなどが必要となります。
申請書類の提出
上記の必要書類を収集・作成し終えたら、申請者が住んでいる地域を管轄する地方出入国在留管理官署に申請書類一式を提出します。
受付時間は平日午前9時から12時、午後1時から4時となっています。
審査期間
申請書を提出すると、出入国在留管理局で審査が行われます。審査期間は標準処理期間として4ヶ月と出入国在留管理庁のホームページに示されていますが一般的には6カ月程度かかります。また、場合によっては追加書類の提出を求められますので対応次第で期間がさらに伸びることになります。
結果通知
永住許可が認められた場合、出入国在留管理局からハガキが届きます。届いたハガキとパスポート、在留カードと手数料分の収入印紙を持って出入国在留管理局に永住の在留カードを受け取りに行きます。
不許可の場合、出入国在留管理局から簡易書留の封書で不許可通知書が届きます。通知書では具体的な不許可理由は分りません。出入国在留管理局に出向き直接確認する必要があります。
申請手数料の支払い
8,000円です。
収入印紙を手数料納付書に貼り付けて新しい在留カードを受け取る際に提出します。コンビニや郵便局で購入できます。
注意点とアドバイス
最低限の必要書類
申請に必要な書類は、出入国在留管理局での要件相談にて申請可能と判断された場合、教えてもらうことができます。また、同庁のホームページにもケース別に記載がありますので指定されたものを不足なく集めて作成・提出すれば問題なく申請することができます。
ただし、あくまでも申請に必要な最低限の書類となっており、これとは別に自己の審査に有利になると考えられる書類を考え集めていく必要があります。
申請書類の正確な記入と書類の有効期限
申請書類に誤りや記入漏れ等の不備がある場合、必要書類が足りない・期限が切れている等の不足がある場合には申請しても書類を受け取ってもらえないこともあり、手続きが遅れる原因となります。必要書類を収集したら誤字や脱字、間違いなどがないよう丁寧に作成し、書類の有効期限を意識して速やかに申請するよう心がけましょう。
※戸籍謄本(全部事項証明書)や課税(非課税)証明書、納税証明書といった公的書類は発行日から3ヶ月以内のものを提出することが求められています。
申請のタイミング
永住許可申請は、在留期限が切れる直前ではなく、余裕を持って行うことが推奨されます。万が一、審査が長引いて在留期間を超えてしまう場合は、在留資格の更新手続きを別途行う必要があります。仮に更新手続きをせずに期間を超えた場合にはオーバーステイとなってしまいますので必ず手続きを済ませましょう。
また、更新手続きで5年または3年の在留期間であったビザが1年になった場合には永住申請が不許可になる可能性があります。もし更新手続きに不利になるようなことがある場合には専門家に相談しながら手続きすることをお勧めします。
出入国在留管理局での待ち時間と申請予約システム
要件の相談や申請、在留カードの受取や不許可理由の聴き取りなどで出入国在留管理局に出向くことになりますが、混雑していることが多く、非常に長い時間待たされることとなります。行く時間や手続きにもよりますが当日はあらかじめ時間やスケジュールに余裕を持たせておくことをお勧めします。
なお、東京出入国在留管理局で申請する方は申請予約システムを利用することでこの長い待ち時間を短縮することができます。オンラインで申請日時をあらかじめ予約することにより当日は申請予約レーンに並ぶことができ、混雑している一般のレーンに並ぶことなく申請することができます。また、申請予約した方は申請の受付から受付完了までの一連の流れにおいて優先的に処理を進めてくれますので予約なしで申請するよりも待ち時間が短くなります。さらには、混雑緩和のため東京出入国在留管理局で入場規制を実施している場合、申請予約システムで予約したことが確認できる画面を職員に提示する又は予約が分かる画面を印刷した紙を持参することによりスムーズに入館することができます。