出入国在留管理庁のホームページにある「永住許可に関するガイドライン」では法律上の要件として以下の3つを挙げています。
それぞれについて説明していきます。
素行が善良であること(素行善良要件)
一つ目は素行善良要件です。
これは申請者のこれまでの素行が善良であることを求める要件です。
永住許可に関するガイドラインでは「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」とされています。
すごく簡単に言えば「悪いことをしていない方」、これが素行善良要件です。
窃盗や強盗などの犯罪行為はもちろん、スピード違反や飲酒運転などの交通違反を犯さず、またオーバーステイなど入管法上の違反をせず、日本の法律を守り善良に暮らしていることが求められます。
また、結婚している場合、自身だけでなく家族(在留資格 家族滞在)の状況にも注意が必要となります。
例えば、ご家族が資格外活動許可による勤務について規定時間超えて就労している場合、または許可を得ず働いている場合には、申請者である自身も素行が善良と認められず、要件を満たすことができなくなります。
もし該当するようであればすぐに適正時間にするなど是正が必要です。
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
二つ目は独立生計要件です。
永住許可に関するガイドラインでは「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」とされています。
一言で言えば「食えてるか、食っていけるか」、これが独立生計要件です。
生活保護を受けておらず、現在・将来、自分の力・自分達の力で安定した生活を営むことができるかが求められる要件です。
この要件は必ず独力で満たさなくてはならないというわけではなく、例えば、申請者が結婚していて扶養の範囲内での収入しかないという場合には、配偶者の収入を含めた世帯単位での収入で要件を満たすことができます。
要件の確認対象期間は直近の5年間。目安となる収入は公的には示されていませんが一般的には300万円を超えていることが必要だと言われています。また、扶養している家族がいる場合には1名あたり50万円~70万円を年収に加算した金額が必要になってきます。
その者の永住が日本国の利益になると認められること(国益要件)
三つ目は国益要件です。
言葉そのままで、申請者の永住が日本の利益になると認められることが求められます。
永住許可に関するガイドラインでは「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」と記載され次の4つを挙げています。
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
順に簡単に説明していきます
まずはアについてです。
引き続き日本に10年以上在留することが求められ、そのうち直近の5年間は就労資格か居住資格であることが必要とされています。
引き続き日本にの「引き続き」についてですが、これにはきちんと意味があり、一回の出国が90日以上だった場合や又は1年間のうち合計でおおよそ100日以上の出国がある場合には「引き続き本邦に在留していること」と評価されない可能性があります。期間を超えている方は注意が必要です。
また、直近5年間の就労・居住資格についてですが、就労資格のみで5年または居住資格だけ5年間といっただけでなく、他にも、就労資格で3年、居住資格で2年といった両方で在留していた場合には合計した期間でも要件を満たすことができます。
次にイについてです。
税金・年金・健康保険や在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請といった入管法上の届け出義務を果たしていることが必要とされています。
特に税金・年金・健康保険については注意が必要です。未納はもちろん支払い期限を過ぎた納付も不許可理由となります。
また、申請時において未納があった場合、不許可となるのは当然ですが、リカバリーすべく、迅速に支払いをおこなったとしても、このことをもって再申請したところで不許可理由が改善されたとは判断されません。
あらためて住民税であれば例えば直近5年間、年金・健康保険であれば直近2年間、期限内に支払われている実績を積むことによって、不許可理由が解消され要件を満たすことになります。
ウになります。
保有している在留資格の在留期間が3年または5年であることが必要とされています。
記載されている「施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間」は5年ですが、本ガイドライン、原則10年在留に関する特例(注)1に「当面の間3年も最長の在留期間として取り扱うと」記載がありますので3年であっても要件を満たすことができます。
最後 エになります
感染症にかかっていないことや薬物中毒者でないことが求められています。具体的にはエボラ出血熱や天然痘、結核やSARSなどといった病気に感染していないこと、覚せい剤や大麻などの薬物中毒患者でないことが要件となっています。